同じスタッフによる 『かもめ食堂』がとても評判がよかったのに、観そびれてしまったので、『めがね』は観ておこうと思っていた。ゆったりと時間が流れ、テーマの「たそがれる」という言葉がぴったりの作品だった。
まあこれも、一種のファンタジーなのだろうか。春とともにやってきて、周囲のみんなに、あるがままに生きることを教訓臭くなく教えて、雨の季節の到来とともに、また消えてしまうサクラさん。季節限定の星の王子さまか。終盤で、次の年に再び現れるサクラさんの首に巻かれたマフラー。タエコの編んだ赤いマフラーが海風になびく様を見ると、星の王子さまのスカーフが思い出される。王子さまは永遠に地球上から姿を消してしまうが、サクラさんは、その名の通り、また桜の季節がくれば、戻ってくるらしいところが異なるけれど。この一過性でないサクラさんの存在のあり方が、もっとも印象に残った点であり、ストーリーのよいところだと思う。季節は再びめぐってくるのだと、素直に信じられるのは、日本人特有の感性ではないかという気もする。
携帯電話が通じないところへ行きたいのなら、携帯電話を持たなければよいのにと思うが、そうする勇気のない人は、旅に出るしかないのだろうか。あとほんのちょっとの想像力があれば、何もない美しい海辺で、波の音に身を委ね、たそがれることもできるのにと、天邪鬼な私は思ってしまう。
結局は、映画作品にするべきほどのテーマなのか、それが一番気になった。映像は美しいし、音楽も心地よいし、俳優もそれぞれ持ち味を出しているが、この映画を106分観るのなら、106分間実際の海を眺めていたほうがよいなとも思った。
(2007.9.29 ユナイテッドシネマとしまえん にて)