ちょっと空き時間が出来たので、時間帯が合う映画があれば何か見ようと探してみたところ、『サウスバウンド』がぴったりの時間だったので、観に行ってみた。テレビでスポットが流れても、あまり食指が動かなかったのだが、数日前に友人が、この映画を観たいと言っていたのを思い出したのだ。全体的な感想としては、よいところも多々あるのだが、やはりすべての面で何か物足りない気がする軽い作品だったように思う。
子供の視点から描かれた物語だから、子供向けの映画を作ろうとしたのだろうか。そうだとしたら、子供を少しなめているのではないかと感じてしまう。昔、三里塚闘争の闘士だったとはとても思えない上原一郎のキャラクター。本当にこの役は豊川悦司さんでよかったのか疑問だ。前半では、子供にとってカッコ悪い困った存在の父親だから、あれでよいかも知れないが、後半になっても、まったく印象が変わらないのだ。単に駄々をこねている大人になりきれない男にしか見えない。天海祐希さん演じる母親の上原さくらにしてもそうだ。なにかサッパリしすぎていて、亭主に惚れてどこまでもついてゆく女性のパッションが感じられない。一郎と対立する東京の学校側の人々や、石垣島の開発業者たちの描き方も、あまりにもステレオタイプだ。前半は生徒役の子役たちの演技力の差が目立ち、見ているのが少々辛かった。
私は個人的には子供が主体の映画は好きではないのだが、この作品ではむしろ、主たる子役の人たちに好感が持てた。一郎の息子、ストーリーの語り手となる上原二郎役の田辺修斗くん、なかなかの好演だったと思う。そして二郎の妹、桃子役を演じる松本梨菜ちゃんが素晴らしい。何かにつけお兄ちゃんの顔を見上げるその表情がほんとうに愛らしい。そして、子供の台詞にも無理がない。だから、大人が自分の信念を曲げずに真剣に生きているところを見せて、子供に何かを学ばせるというのがテーマなら、映画そのものも、もっとちゃんと大人を描くべきだと思う。
よかったのは、音だ。虫の鳴き声、薪割り、スイカ割り、みんな気持ちのよい音だ。その面では、先日の『めがね』より、よほど自然を感じられた。
(2007.10.12 シネリーブル池袋にて)