最近はやりのファンタジーものだが、他の作品とは一線を画しているという宣伝文句は果たしてどうだったか。
率直な感想は、『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』と、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のシリーズを足して2で割り、『ハリー・ポッター』シリーズのテイストをちょっと振りかけ、全体を薄めたという印象だ。昨今のVFX技術の水準は高いから、映像は綺麗で迫力もある。150年前のイギリスという設定も、雰囲気がよくあらわれていると思う。ただ、チラシや予告編を観たときから、少し懸念されたことが、やはり現実のものとなった。登場人物に現実感がありすぎて、ファンタジーのテイストが損なわれているのだ。もっとも重要と思われる女性の形をした流れ星を演じるクレア・デインズ。彼女がまずファンタジックに見えない。うっとりするほど素敵でもないし、何より人間以外の何者でもないように思えてしまう。また、トリスタン青年を演じるチャーリー・コックスも、重大な運命が待ち受けているような高貴さが感じられない。
この映画をコメディーととらえるなら、それなりに面白いところはたくさんあった。次々に死んでしまう王子たちが亡霊となって騒ぐところは一番笑えるし、魔女を大熱演するミシャル・ファイファーは見ものだし、大御所ロバート・デ・ニーロ演ずる女装趣味の空の海賊も面白い。それでも、肝心のファンタジックな面が極めて薄く、星空も印象に残らないし、恋物語も筋立てが単純すぎる。子供向けかと言えば、結構残酷な場面もあるからそうとも言えない。"壁"に囲まれた町の話など、もっと突っ込んで描いて欲しい場面もたくさんあった。決定的なのは、音楽。壮大なオーケストレーションで、これでもかと盛り上げようとする音にうんざりしてしまった。主題歌のテイク・ザットによる曲がよかっただけに、あの映画なら音楽をもっと現代的なものにすべきだと感じた。
(2007.10.22 なかのZEROホールにて)