原作は読んでいないが、京極夏彦の作品は好きなものもあるので、面白そうだと思い、試写会に応募してみた。謎解きそのものよりも、ディティールで見せる作品と言ってよいだろう。
いろいろ細かないきさつはあるけれども、結末はありがちなもので、ストーリー自体はそうワクワクドキドキするものではなかった。前半はとにかく、様々な小話がバラバラに出てきて、何がどう繋がるのかいっこうにわけがわからない。人間関係もつかみにくい。それが、3分の2を超えるあたりから、錯綜した筋が一気に結末へと解きほぐされていくことになる。音響効果にもよるのかも知れないが、とくに前半、台詞が聞き取りにくいところが多々あるのには参った。
楽しかったのは、堤真一さん演じる京極堂の元に、腐れ縁ともいうべき盟友たち、阿部寛さん演じる榎木津、椎名桔平さん演じる関口が集まってくるところだ。奇しくも同年のこの3人のからみは、一番の見せ場だろう。堤さんは、はまり役だ。似非宗教家のところへ乗り込んでいく際の身のこなしや、台詞まわしなど、実にきまっていて気持ちがよい。それに比べると、あとの二人の性格付けが少しあいまいだったような気もする。鍵を握る男を演じる宮藤官九郎さん、こういう変な男を演じさせると実にうまい。
上海ロケで、戦後間もない時期の雰囲気を出しているし、美術もかなり凝っていて、背景は見ごたえがある。ただ何となく全体的にちぐはぐな印象を受けるのは、台詞のスピードが速い人がいて、それが時代背景とそぐわないからではないかなと思う。「超高速展開サスペンス」と銘打つからには、観客を置いてけぼりにしないように、台詞はもっとはっきり、ある程度ゆっくりさせて、そして場面転換をスピーディーにしないと、慌しいだけで終わってしまうものになってしまう。そして、「魍魎」のほうは、京極堂の説明でよくわかるが、肝心の「匣」のほうはあまり印象に残らない。
(日本教育会館一ツ橋ホールにて)