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『あの空をおぼえてる』試写会

ストーリーをざっと知って、決して好みではないけれど、水野美紀さんを見たくて行ってきた。いくつかのテレビドラマでのちょっと抜けたところのある人物像や、映画の『踊る大捜査線』シリーズのイメージが強かったのだが、昨年『図鑑に載ってない虫』で変わった女性を演じた水野さんが案外気に入ったのだ。今回は2児の母親役。

続き
子供を不慮の事故で亡くした親が絶望のどん底に突き落とされる…このストーリーを聞いただけで、本来ならまったく観たくないと無視する類の映画だ。可哀想で観ていられないとか、泣くのが嫌だからではない。それを描くことに何の意味があるのか理解できないからだ。悲しみを乗り越えて、思い出とともに新たに歩みだす家族…なんだか、水戸黄門の印籠のように、鳥肌がたつほどお定まりの展開ではないか。現実に、子供を亡くした親なら、この類の映画は決して観たくないだろう。そして、幸いにもそういう辛い体験をしたことのない人は、これを観て何を思うのだろう。ああ、立ち直れて良かった。これからは、亡くなった子の分まで幸せに暮らして行ってねと、呑気にほのぼのできるのだろうか。その種の感情が動かない私は、ストーリーにはしらけ切っていたので、映像そのものと、役者さんだけを注視することにした。

タイトルバックがとても可愛い。少しメルヘンがかった楽しい作りだ。映画のタイトルが示すように、「空」が映像のポイントだと思うのだが、その空の映像がいささか疑問だ。もっと空には表情があるはずなのに…印象に残らない。

個人的な好みばかり述べ立てても不毛なのだが、亡くなってしまう女の子役の吉田里琴ちゃんが、どうもピンとこない。あの年代の女の子にありがちな小ずるさと媚が目立ち、感情移入できないのだ。そして、肝心の竹野内さん演じる父親、あんな情けない男は願い下げ。愛娘を亡くしたことで打ちひしがれるのは、もちろんわかるが、周囲のことが何も見えなくなってしまうほど落ち込むあのメンタリティーは日本人には不似合いなのではないかと感じた。原作がアメリカのものなので、これがアメリカ映画だと想定してみると、そういう父親はいかにもあり得そうに思える。さらに、地方に暮らしていて、あの若さで高級別荘のようなあの家は何?写真館て、そんなに儲かるの?緑豊かな地方に住んでいて、その栄養バランスの取れていない食事はなに!?などと、余計なつっこみをしたくなるほど、道具立ても嘘くさい。文章を書くことが好きとも見えなかった小学生が、亡くなった妹に宛てて、出さない手紙を書き続けるというのも、気味が悪い。結局、この原作を日本で映画化しようとしたことに無理があったのではないかと思うのだ。

水野さんは、妊婦の雰囲気がよく出ていて、とてもよかった。憔悴している時期と、吹っ切れた時期との落差もちゃんと演じ分けていて、うまいなと感じた。一番印象に残ったのは、ストーリーとほとんど関係のない、小日向文世さんのカツラのエピソードと、濱田マリさんのビンタの迫力だった。

(2008.3.17 九段会館大ホールにて)

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