まあまあ面白かった。「まあまあ」であって、「とても」ではないところが微妙だが。
原作を読んでいないので、果たして主人公の明日香を演じるのが内田有紀さんでどうなのかというのが最大の疑問だった。
精神病棟の患者たちと、一見病気でもなんでもなさそうな普通の女の子である明日香との対比に妙があるとしても、内田さんがどうもしっくり来なかった。しっちゃかめっちゃかな生活を送っている一種の堕落感(?)が彼女だと感じられないし、言ってみれば、どこまでも爽やかさがついて回る女優さんのように思えるので、自殺未遂に至るトラウマを奥底に秘めた人物に見えないのだ。その普通すぎるところが狙いだというのであれば、これはもう好みの問題だから仕方なおのだが。
一方、患者の女性たち、蒼井優さんがとくに素晴らしかった。この拒食症のミキ役のために減量をしたと、どこかで話していたが、本当に折れそうに細い身体で、目つきも喋り方も、役そのもの。蒼井さんも、実に引き出しの多い楽しみな女優さんだ。明日香の自堕落な恋人鉄雄を演じる宮藤官九郎さん、冷酷なナースでありながら、どこか憎めない江口を演じるりょうさん、心優しいナース山岸を演じる平岩紙さんなど、周囲を固める役者さんたちはとても皆よかったように思う。
ストーリーには意外性がないだけに、ディティールの積み重ねがポイントとなってくる作品だ。少しは笑えるところがあるけれども、笑い自体は前面に押し出されているわけではない。殴ったり、転んだり、倒れたり、動きのあるところはテンポが感じられたが、それ以外の部分がやや退屈だった。病院内は個性的な患者がたくさんいるので、それだけで躍動感があるが、明日香と鉄雄の暮らしのシーンがもうちょっと何とかならなかったかなと思う。徹底的にすっとぼけた宮藤さんと、飲んだくれなはずなのに、健康的にしか見えない内田さんとが噛み合っていない気がした。そして、何に私が満足できないかをよくよく考えてみると、台詞に面白みがないからだと気づいた。場面場面で俳優さんたちの顔つき、身のこなしは思い出すのだが、台詞がひとつとして印象に残っていないのだ。
明日香があまりに、立ち直るべくして立ち直ってしまうので、この映画を観て、生きることが大切だなんて思えないな。ま、若いといろいろあるよね、という程度の感慨で終わってしまう。
(2007.10.22 新宿ジョイシネマにて)