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『ある愛の風景』試写会

スサンネ・ビア監督の作品は、現在公開中の『アフター・ウェディング』を観たいと思いながらも、まだ観ておらず、12月公開になる『ある愛の風景』を先に試写会で観ることになった。けれども、実際には『ある愛の風景』は、2004年の作品なので、日本での公開がたまたま時系列に沿っていなかったわけだ。

様々な映画祭で、数え切れないほどの賞に輝いているこの作品は、さすがに見ごたえがあった。まず、様々な年代の登場人物の心理を、どれも丁寧にリアルに描いていることが印象的だ。男は描けているのに、女の描き方がなってない、とか、若い人は生き生きと描かれているのに、年寄りの描き方はステレオタイプだ、などという偏りはしばしば見られるものだが、この作品ではいっさいそういうことがなく、男の苦悩、女の苦悩、それぞれがリアルで、例えば1人の男を描くのでも、父としての心情、夫としての心情、兄としての心情と多角的な視点で描いているので、非常に重層感がある。脚本がきわめて優れていると感じた。

映像としては、目と手の描写に特徴があり、これが非常に雄弁だ。おそらく目は苦悩の象徴であり、手は愛情の象徴なのだと思える。主演女優のコニー・ニールセンを始めとして、役者さんたちは子役に至るまですべて素晴らしい。なぜヨーロッパの俳優さんたちは、こんなに自然な演技ができるのかと感心してしまう。とにかくサラ役のコニーの魅力的なこと、そしてサラの長女を演じる女の子が次に印象に残った。

映画の前半は、揺れるカメラワークがちょっと苦手な気がしたが、後半は気にならなくなった。残虐な場面や悲惨な場面も、おぞましさ一歩手前の抑制のきいた画面作りで好感が持てる。個人的にはラストシーンの、希望のほの見えるところに、物足りなさを感じはするが、本当によい作品だと思う。唯一、この『ある愛の風景』という邦題、これが最悪としか言いようがない。このウェットなバカバカしいタイトルのおかげで、作品のよさが損なわれてしまう。実は最初は、このタイトルだけで、まったく観るつもりになれない作品だった。たまたま試写会に誘われたので、行ってみて、見逃さないでよかったと思えたのだ。デンマーク語の原題は、英語の「Brothers」と同じ意味なのだそうだが、これを日本語にするのは確かに難しいところだろう。

(2007.11.12 虎ノ門ニッショーホールにて)

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