ほとんど情報に接することなく観に行ったために、どんな映画なのか、事前にまったく見当がつかなかったのだが、とてもキュートな作品だった。「可笑しかった」という評判の映画を観ても、ほとんど笑うことのない私が、思わず声に出して笑ってしまう場面が、そこここにある。もちろん、それはコメディーの可笑しさとは異質なもので、音楽を愛する真面目で平凡な人たちが、慎ましく行動しながらも、あるいは、慎ましく行動するからこそ醸し出してしまう温かみのある可笑しさなのだ。人間がとても魅力的に描かれていると思う。どこでも整列してしまう生真面目な警察音楽隊の面々と、自由で活発なイスラエル女性との対比がとてもよい。この「整列」という絵柄が、画面作りの上で非常に効果的だ。台詞もよく練られていて、音楽隊が音楽を演奏する場面は極めて少ないのに、何気ない一言一言で、彼らの音楽に対する愛情がよく理解できる。あとで、映画公式サイトをのぞいてみて、町の名前に深い意味があることがわかった。なーるほど!
俳優陣については、団長を演じるサッソン・ガーベイがやはり抜群によい味を見せている。滑稽の一歩手前で踏みとどまっている存在感が、さすがだと思う。何か今までに見たことのあるどの映画とも似ていない不思議な雰囲気の作品であるが、かなり気に入ってしまった。
(2008.1.11 シネ・リーブル池袋にて)