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『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』試写会

久しぶりにフランス映画で、これは素晴らしいと言い切れる作品だった。エディット・ピアフといえば、あまりにも有名なシャンソン歌手、その数奇な生涯とともに独特の歌声で一世を風靡した伝説の歌姫だ。その強烈な歌声と、よく知られすぎたフレーズゆえに、今まであまりピアフの歌をじっくり聴いてみようと思ったことはなかった。だからこの映画に関しては、エディット・ピアフに興味があったというより、マリオン・コティヤールが主演と聞いて、観てみたいと思ったに過ぎない。『TAXI』 に出ていたことなど、まったく覚えていなかったが、2001年の作品 『銀幕のメモワール』 で彼女を見て、とても上手い女優さんだなと印象に残っていたので、彼女が主役なら一見の価値があるかも知れないと思ったのだ。

続き

すでに数々の映画祭で、この作品は最優秀作品賞や、観客賞や、最優秀女優賞に選ばれており、本年度アカデミー賞の最有力候補とも言われている。まさにその高い評価に値する力強い作品であると感じた。ともかく、マリオン・コティヤールが素晴らしい。ピアフの20歳くらいから亡くなる47歳までを演じているのだが、どの年齢においてもごく自然に、その年齢にふさわしい表情・声・身のこなし・雰囲気をスクリーン上で見せてくれる。喜怒哀楽の激しいピアフの表情、舞台での立ち姿、歌うときの口元、どれひとつとっても文句のつけようがない。あらためて、こんなに上手い女優さんだったのだと、唸らずにはいられなかった。また、5歳のピアフ、10歳のピアフをそれぞれ演じた子役さんたちも、とてもよかった。ヨーロッパの子役さんたちは、どうしてこんなに自然な演技ができるのかと感心してしまう。

映画は、ピアフの少女時代、10代、20代、30代、40代が複雑に交錯する構成だ。だが複雑であっても難解であるわけではない。そして、ピアフの生涯の節目節目と彼女を歌とを実にうまく織り交ぜて、いくつもの見せ場を作ってくれている。聴き慣れたフレーズも、彼女の生涯の様々な出来事の横糸として配置されると、その歌詞がひときわ胸に迫ってくる。もう、まったくタイトルも覚えていないが、昔、やはりピアフの生涯を題材にした映画を観た記憶がある。それは、彼女の男性遍歴や数奇な生涯にスポットを当てた激しい内容のものだったように思う。けれども、『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』は、むしろピアフを取り巻く人々の優しさが作品全体に温かみを添えており、どれだけの人が彼女を愛し、彼女を孤独から救ってきたかが感じられる。激しくて、強くて、しかも温かい作品なのだ。そしてテクニックだけの歌ではなく、全身から命のありったけを振り絞って歌うピアフの歌声は、これまでの私のピアフ観を一新させてくれた。遅まきながら、初めてピアフをちゃんと聴いてみたいと思わせてくれたのである。

余談になるが、この映画で歌われている曲のなかで、私が一番好きな曲、《Non, je ne regrette rien》(邦題「水に流して」)には思い出がある。『略奪者』(2002年)というフランス映画の中で、荒くれ男たちが、爆走するトラックの中で声を揃えて、この歌を歌うシーンがあるのだ。その映画のストーリーにも歌詞が妙にマッチングして、大好きなシーンだった。

邦題は『エディット・ピアフ~愛の讃歌』だが、フランスの原題は、《La Mome》で、これは作品中にも出てくる通り、ピアフのあだ名の「小娘」といった意味だ。また、フランス以外での公開タイトルは《La Vie en Rose》(ラ・ヴィ・アン・ローズ)と、彼女のヒット曲のタイトル「バラ色の人生」と同じになっている。

「愛を生きた世界の歌姫 涙と喝采の物語」という陳腐な宣伝文句がもったいないほどの出来栄えだと思う。ピアフをまったく知らない人には、もしかするとぴんとこない映画かも知れないが、「あなたの燃える手で 私を抱きしめて」など、有名なフレーズをちょっとでも聴いたことのある方には、心からおすすめできる作品だ。

(2007年9月24日 科学技術館サイエンスホールにて)

映画公式サイト

コメント一覧

baron 2007年11月14日(水)23時24分 編集・削除

ご無沙汰しています。
こちらではお初な上に亀コメですみません。
今日やっと上映終了すれすれセーフで見てきました!
そしてやっとここのレビューをじっくり読ませていただいて感動を新たにしています。
マリオン・コティヤール素晴らしかったです。吹替えが全く違和感なく、圧倒されました。
「水に流して」は私も一番印象に残った曲でした。観賞後、CDを買おうと思ったら売り切れでした。やはり皆同じことを考えるんですね(笑)
この素晴らしい楽曲が原語で味わえるすいっちさんが心からうらやましいです。

すいっち 2007年11月15日(木)00時01分 編集・削除

baronさん、こちらへのコメント、本当にありがとうございます。初のお客様です(^^*)
マリオンは背が高いのに、まさにチビのピアフに見えましたよね。それだけでももうスゴイ!と思ってしまいました。
サイエンスホールのスクリーンはさほど悪くもありませんが、それでもbaronさんは、ちゃんとしたスクリーンでご覧になったのですから、なお一層迫力をお感じになったことでしょう。音響効果のよいホールでもう一度観たいものだと思っています。
どうぞまたお立ち寄りくださいね。

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