試写会に当たったので喜んでいたら、24日の米アカデミー賞でなんと作品賞をとってしまったではないか!これはタイムリーだと、ますます期待は高まった。今年のアカデミー賞ノミネート作品は、暗い映画が多いとか、中年世代の人たちがぐっとくるような傾向の映画などと聞いていたが、なるほど、『ノーカントリー』のような作品が評価されるのか、とアカデミー賞に対する認識が少し変わった。ともかく、4部門をも制覇した作品、まずどんな視点から観ようかと迷うほど見所は多かった。
生々しい殺戮場面、どす黒い血、冷徹な殺人者。こんなにバイオレンスの性格が強い作品とは思っていなかった。アカデミー賞で助演男優賞に輝いたハビエル・バルデム演じるシガーの醸し出す恐怖はさすがで、サスペンスの要素もたっぷりある。ただいわゆる恐怖映画と異なるのは、シガーに相対する人たちが怯えるのではなく、男の本能から敢然と立ち向かって行くことだ。恐ろしい場面があっても、この映画には叫び声がないところが非常に特徴的だと思う。もちろん、誰もが悲鳴をあげる暇もなく殺されてしまうのだから、必要ないといえばそれまでだが、その乾いたタッチが面白い。ベル保安官を演じるトミー・リー・ジョーンズ、ベトナム参戦経験を持つ男を演じるジョシュ・ブローリン、そしてくだんのハビエル・バルデム、この3人が主要な人物であるが、映画は決して彼らを過剰に人物描写しようとはしない。台詞も多くを語らず抑制の効いたものであるが、英語をちゃんと聞き取りたいという欲求を起こさせるものだった。英語の聞き取りが苦手なので、もちろん全部がわかるわけではなく、短い字幕だけでは、到底あらわしきれない深みが台詞にこもっていたと思えるのだ。
極端な言い方をすれば、この作品では人物さえも背景に過ぎず、その時代(1980年代)、この国そのものを描いているのだなと感じた。そして、これは同行した連れ合いの感想であるが、ニューヨーク、ワシントンはアメリカじゃない、という意見にも同感だ。映画の中で描かれているテキサスという土地、ベトナム戦争の記憶も色濃く残っているハイテクも何も登場しないこの時代と場所が、よくも悪くもアメリカらしいアメリカを感じさせてくれると思うのは、私が外国人だからだろうか。
結末のどちらにも取れそうなベルの台詞。父親と同じように生きてゆく、つまり退職してからもシガーを追い続けるという意味なのか、それとも時代への諦念に甘んじて同じように死んでゆくという意味なのか。チラシのデザイン(ベル保安官がバッファローの角を頭に頂いている)がポイントであるのだとすれば、前者か。
観て楽しい、面白いという類のものではないが、後からじわじわ胸に迫るものがある作品だった。冒頭のテキサスの荒涼とした大地に夕闇が降りてくる景色がなんとも美しい。
(2008.2.27 なかのZERO大ホールにて)
luckystriker 2008年03月01日(土)09時57分 編集・削除
おぉ!本当に「試写」当選確率高いですね(笑)
確率で言えばイチローもびっくりの4割以上いっているんじゃないですか?(^_^)v おめでとう!
コーエン兄弟の映画は今まで見たことがないんですけど、これは恐そうですねー(>_<)
すいっちさんのレビューを読むといつも観たくなるんですけど、これはちょっと無理っぽい(笑)
私は、以前アメリカのイメージと言えばインディアンやカウボーイでした(古すぎますね、何十年前の話やら~^^; )
でも、それは海外の方が日本人と言えば侍をイメージするような感覚なんだろうなーと思いますけど、今の日本、どこを探しても侍姿の人はいませんが、アメリカはまだまだ地域ではそう変らない生活をおくっている人たちがいる(保護区になっているからでしょうけど)というのがすごいです。
コーエン兄弟の「バーバー」はコメディっぽく古き良き時代(?)のアメリカ映画だと聞いていますがご覧になりましたか?こっちから見てみようかな~^^;