去年に引き続き、今年も春はどうやらツキがあるらしい。毎日映画コンクールの表彰式とレセプションの招待に応募したら、信じられないことだが当たってしまい、本日(13日)連れ合いと行ってきた。いつも、テレビ報道で表彰式のステージの模様を見るだけなので、これほど豪華なイベントとは思わなかった。ともかく俳優さんたちが、ごく間近で見られて、大満足。会場は大きなホールで、ステージのすぐ前には丸テーブルが5つくらい並んでいる。そこは受賞者たちの席だ。私たち当選者は、椅子席の真ん中より後ろあたりだったが、会場は横幅が広く奥行きが狭いので、私たちの席でも十分ステージがよく見えるし、ステージの左右には大きなスクリーンがあり、受賞者たちの顔をアップで映し出してくれるので、どこにいても見えないなどということはない。さりげなく受賞者たちが会場後方から入場してくる。一番のお目当てだった麻生久美子さん、男優主演賞副賞のニッサンSkylineの前でちょっと足をとめ、技術賞の北村道子さんと何やら話しながら、席につく。ウエストから下がバルーン風に膨らんだ可愛い黒のドレス。黒のストッキングにピンクのハイヒールが素敵。
司会の男女が登場し、まず主催者側の挨拶、祝辞などが述べられる。いよいよ賞の授与に移る。最初はスタッフに与えられる賞から。受賞の対象となった映画のシーンがスクリーンに映し出される。『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』で技術賞の北村道子さんだ。「美術賞の佐々木さんと一緒に、この作品で受賞できたのが嬉しい」と短く語った。
『しゃべれどもしゃべれども』で録音賞の小松将人さん。「こんな素敵な賞をいただけて、国分さん、松重さんとともに受賞できて本当に嬉しい」と、やはり同じ作品にかかわった人々との同時受賞が何よりもスタッフの方々には嬉しいことなのだなと感じる。
『天然コケッコー』で音楽賞のレイ・ハラカミさん。ご本人は欠席だったが、代理の方が、「レイ・ハラカミさんは映画音楽を手がけるのは初めてだったので苦労され、通常より2~3倍の時間をかけた」と、その苦労が賞に結びついたことを嬉しく思っていると話した。
『殯の森』で撮影賞の中野英世さん。「テレビドキュメンタリーをずっと撮っているが、初めて撮らせていただいた映画で賞をいただけるとは」と感激の言葉を述べた。
『天然コケッコー』で脚本賞の渡辺あやさん。「原作が何より素晴らしく、原作のままに書いたので、私は何もしていないようなもの。今後は自分で何かしたと実感できるように精進したい」と述べた。
『それでもボクはやってない』で監督賞の周防正行さん。「初めて映画の監督をしたときは、よーいスタート!と毎日声を出すだけで嬉しい、監督をするだけで嬉しいと思ったが、最近は、ただ映画を作るという喜びは少なくなってきて、辛いことが多くなっている。だんだん賞も、その重みに責任を感じて、手放しで喜べなくなっている。この重みをしっかりと受け止めて、これからも作りたい映画をしっかり作って行こうと思う」と述べた。これを訴えなければという作品のテーマがいかに監督の中で重かったか、そのためにどれだけの苦労があったかがしのばれるコメントで、何だかホロリとしてしまった。
ドキュメンタリー映画賞の『バックドロップ クルディスタン』は、野本大監督が出席。「この映画を作って、自分の未熟さがわかった。今後も未熟なりによい作品を作りたい」と述べた。
アニメーション映画賞の『河童のクゥと夏休み』は、原恵一監督が出席。「ひとつだけ自信があるとすれば、作りたいと思ってから完成するまでの長さにかけては負けない自信がある。20年くらいかかってしまったけれども、やっと作ることが出来た」と述べた。
大藤伸郎賞の『カフカ 田舎医者』は、山村浩二監督が出席。「短編を作っている者にとっては、この賞は憧れの賞」と喜びを述べた。
外国映画ベストワン賞の『長江哀歌』は、オフィス北野の森氏が出席。「ジャ・ジャンクー監督を応援して10年くらいになるが感無量」と述べ、「山峡地区を代表して賞を受けている気持ち」という監督からのメッセージを代読した。
TSUTAYA映画ファン賞の日本映画部門『恋空』は、今井夏木監督、外国映画部門『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』は、宣伝プロデューサーの方が出席された。
さて、いよいよキャストの表彰に移る。
スポニチグランプリ新人賞の成海璃子さん。相当緊張の面持ちで、言葉少なに感謝の念を述べた。
同じく、スポニチグランプリ新人賞の松田翔太さん。片側だけ長く伸ばしたヘアスタイルで、すらりとしてカッコいい。『ワルボロ』について、「後悔しないように、台本をボロボロになるくらい読み込んで、とことん不良をやろうと思って臨んだ。賞をいただいたことで、どこか自信を刻めるようになった」と述べた。
女優助演賞の高橋惠子さん。さすがに着物姿が板についていて、立ち居振る舞いの美しいこと。「夢にも思っていなかった素晴らしい賞をいただいた」と、女優になって30年にもなるのに、自分は賞には縁がないと思っていたことを感激とともに述べた。
男優助演賞の松重豊さん。スクリーンで見るコミカルさや、悪役風のたたずまいはなく、素敵な方だと再認識。『しゃべれどもしゃべれども』では、しゃべるのが苦手な野球解説者の役だが、「あれは演技じゃない、というくらい今日は緊張している。45年生きてきて、初めてもらう賞が、こんな素晴らしい賞なんて」と嬉しそうにおっしゃるので、心からの拍手を送った。
女優主演賞の麻生久美子さん。「佐々部組のスタッフから、毎日映画コンクールはスタッフにも賞をくださる暖かい賞なのだと聞いた。この作品での受賞だということが何よりも嬉しい。スタッフ、キャストの支えなしには実現しなかったので、みんなを代表して賞をいただきに参りました」と、やっぱり瞳をうるませて語った。
男優主演賞の国分太一さん。「TOKIOには長瀬という素晴らしい俳優がいるので、受賞の知らせがきたときも、事務所も長瀬じゃないんですか?奇跡だ、と言ったほど。どこかで大きなドッキリをされているんじゃないかと思っている」と、これからも俳優をやっていきたいと述べた。
田中絹代賞の中村玉緒さん。「映画が大好きで大好きでやってきたが、14年前からぷっつり出演の話がなくなった。それが今回『椿三十郎』で役をいただき、夢のようで、それで満足していたのに、こんな賞がいただけて幸せ」と述べた。
特別賞の故・熊井啓監督。夫人が出席され、「プロダクションを作らなかったので、事実上二人でやってきて、亡くなる数日前まで、これはどこへ持っていこうかなどと、映画の話をしていた。どんなにか喜んでいることでしょう」と語った。
同じく特別賞の故・犬塚稔監督。代理の方が「106歳で亡くなるまでシナリオを書き続けていた」と夫人からのメッセージを伝えた。
日本映画優秀賞の『天然コケッコー』は、山下敦弘監督が出席。「こんなすごい表彰式だとは思っていなかったので、頭が真っ白になった。原作が素晴らしいので、なるべくいじらないようにしようと、脚本の渡辺あやさんとも話した。賞は原作にあげるべきと思っている。僕も今後はオリジナル脚本でここに立てるように頑張りたい」と述べた。
そして最後の受賞。日本映画大賞の『それでもボクはやってない』は、アルタミラピクチャーズの方が出席。「いまだに"それでもボクはやっていない"とタイトルを間違えられる」という話が記憶に残っている。
さて、滞りなく表彰式が済み、レセプションとはいったいどんなものかと思っていたら、会場を隣に移して、関係者の挨拶や、受賞者の大部分がふたたび勢ぞろいしての乾杯などで始まり、あとは思い思いに歓談というスタイル。とにかく大勢の業界人で、会場は埋め尽くされている。しばらくビュッフェの食べ物をつまんでいたら、もう帰られたと思った麻生さんが、会場にいらっしゃるではないか。いろいろな人とにこやかに挨拶を交わし、写真撮影にもいやな顔ひとつ見せない。私たちは、写真は禁止されていたが、ありったけの勇気を振り絞って近づいて、サインをお願いしてみた。もしや機会があるかと思って、『ハーフェズ ペルシャの詩』の映画パンフレットを持参していたのだ。この場では、『夕凪の街 桜の国』のパンフのほうを持ってくるべきだったかも知れないが、麻生さんは、パンフを見るなり「あ、ハーフェズ!ご覧になったのですか?」とニコニコ顔になり、快くサインをしてくださった。「とっても良い映画でした」と話しかけると、「ちょっと難しい映画でどうかな…と思っていたんですけれど」とおっしゃる。「1回で気に入って、絶対もう一度観に行きます!」と言うと、とっても嬉しそうにしてくださった。「『たみおのしあわせ』や『ボクたちと駐在さんの700日戦争』も楽しみにしています」と言うと、「たみおはいいですよ」とか「ボク駐は面白いですよ」とか、ちゃんと答えてくださるのだ。一般人の私などにも、実に気さくににこやかに応じてくださり、大感激で、ますますファン度が増してしまった。とにかく、一番お会いしたかった麻生さんに会え、お話もでき、夢のようなひとときだった。最初から最後まで、当選者の面倒を見てくださった映画賞事務局のスタッフの方、ありがとうございました。
(2008.2.13 セルリアンタワー東急ホテルにて)