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キネ旬ベスト・テン第1位映画鑑賞会と表彰式

昨日、第81回キネマ旬報ベスト・テンの映画鑑賞会と表彰式に行ってきた。映画は3作品が上映され、3つとも観るのは少々負担だったので、文化映画第1位の『ひめゆり』と、日本映画第1位の『それでもボクはやってない』の2本だけを観た。どちらも公開時に観た作品なので、これが2度目の鑑賞だ。

『ひめゆり』は、初めて観たときには、、座っているのに、ただただ呆然とスクリーンの前に立ち尽くすといった気分だったのだが、今回は冷静に観られるかと思っていたら、かえって女学生たち一人ひとりの思いがよりいっそう胸に迫り、とめどなく涙がこぼれ、あやうく号泣しそうになった。これが事実なのだと思い知らされることは、何と重く、何と悲しく、何と彼女たち(犠牲になった方々、生き残った方々ともに)が愛おしく思えることか。

『それでもボクはやってない』は、最初に観てからほぼ1年が経っているのだが、変わらず新鮮で精緻で、素晴らしい作品だとあらためて思う。今回印象に残ったのは、冷徹な裁判官役の小日向文世さんと、穏やかで冷静な人柄でありながら芯の通った弁護士役の役所広司さんだ。主演男優賞を総ナメにする勢いの加瀬亮さんについては、確かにうまいし、役柄そのものなのだが、持ち味に合致しすぎる役柄に思え、とりわけ新鮮さが感じられなかった。つまり、例えば『スクラップ・ヘブン』や、『めがね』での加瀬さんとのギャップがないと私には思えるのだ。

さて、楽しみにしていた表彰式。日本人の個人賞受賞者で欠席者がひとりもいないという豪華メンバーがステージ上に揃った。司会はここ数年通り、笠井信介アナ。去年と同じジョークを発するので少々がっくり。1年前の記憶はそんなに薄れていないものですよ!と言いたくなる。同行の友人とも感慨を述べ合ったのだが、とにかく主演女優賞の竹内結子さんの美しさは特筆ものだ。テレビや映画で見慣れているものの、実際の竹内さんは、その何倍も美しい。受賞者のコメントは、時間の制約もあって、それぞれ短いものだったが、印象に残ったことをつづっておこう。

◇日本映画作品賞『それでもボクはやってない』
アルタミラピクチャーズの桝井省志プロデューサーが出席。歴史ある作品賞を受賞して大変光栄であると述べ、この作品は、周防監督との企画段階から、果たしてメジャー公開していいんだろうかと不安な状態でスタートしたと述懐。それが各方面の協力を得て、全国公開され、評価に結びついたことに感慨もひとしおという面持ちだった。

◇外国映画作品賞『長江哀歌』
配給会社ビターズエンドの定井勇二氏が出席。ジャ・ジャンクー監督の5本目にして、このような賞をいただき、とくに観客の方々、キネ旬の読者の方々に感謝していると述べる。発売になったばかりの「キネマ旬報」2月下旬号にも掲載されているジャ・ジャンクー監督のコメントも読み上げた。

◇文化映画作品賞『ひめゆり』
対象はプロダクション・エイシアだが、柴田昌平監督が出席。出席者の中で、僕だけが危うく欠席かも知れないところだったと説明。テレビ番組の制作でモスクワにいらしていたそうな。いつ欠航するかわからないアエロフロート機でやっと帰国なさったという。他の作品に比べればまだまだ微々たる数の観客動員数だが、これから何十年も上映し続けて行きたいと語った。

◇日本映画監督賞/脚本賞/読者選出日本映画監督賞 周防正行
トリプル受賞とあって、開口一番「どうしよう…という感じ」と苦笑い。面白い映画とかいいものを作ろうという気がまったくなくて始めた作品。このまま黙っていてはいけないという思いで作りたくて作った。テーマからして「社会派」といわれることは仕方ないだろうと覚悟していたが、この「社会派」という言葉の持つ敷居の高さを超えるものにしたいと思っていたところ、途中から「エンターテインメント」だといわれるようになった(笑)これからどうなるかはわからないが、一生映画監督をやっていくだろうとは思う、と述べた。『それボク』が『Shall we danse?』から10年ぶりということもあって、笠井アナが、次回作は10年後ということはありませんよね?と水を向けると、「わかりません」と答えていた。

◇外国映画監督賞 ジャ・ジャンクー
オフィス北野の内山(?)プロデューサーが出席。キネ旬の結果は中国でもかなり大々的に報道されるらしく、ジャ・ジャンクー監督も大変喜んでいたと述べる。

◇主演女優賞 竹内結子
白いドレスがひときわ輝いて美しいが、気負わずサバサバした調子で感想を述べる。今朝のテレビ報道でも竹内さんはしばしば映ったが、5kgの重さのトロフィーによろめきそうになりながら、喜びに重みがあるとすれば、この5kgのトロフィーは格別です、と述べた。

◇主演男優賞 加瀬亮
丈の短いパンツにカットソーのような素材のジャケットで、着くずしたようなお洒落なスタイル。今回の作品は、スタッフなど周りに支えられて賞に結びついたと思うので、今後は自分の力できちんとこういう場に立てるように頑張りたいと、地に足のついたコメントだった。

◇助演女優賞 永作博美
竹内さんと対照的に、黒のウエストを絞ったドレスで、大人っぽい雰囲気。対象作品の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は、安定感のない役だったので、賞をいただくのが不思議な気がしている。今後は、見てくださった方が楽しんで下さるような役をやっていきたい、と述べた。

◇助演男優賞 三浦友和
いつもと変わらないオーソドックスなスーツ姿だが、紺色の縁のメガネがお洒落。風邪をひかれているそうで、少し鼻声。対象作は『転々』、『松ヶ根乱射事件』、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』だが、去年は6作が公開されたので、6本の合わせ技で賞をいただけたと思っている。心から感謝している。これからも俳優として精進して行きたい、と述べた。

◇新人女優賞 蓮佛美沙子
登場のときから紅潮し、非常に緊張している様子がうかがえる。それでも、まさか受賞できるとは思っていなかったので、ここに立って重いトロフィーを持って、やっと現実なのだと実感していると述べ、スタッフや観客に対する感謝の念をしっかりと伝えていた。

◇新人男優賞 林遣都
若者らしく、鎖のアクセサリーなどをあしらったお洒落をしている。選ばれたと聞いたとき、まったく実感が湧かず、キネ旬がどんなにすごい賞かも知らなかった。『バッテリー』で、多くの大切な出会いがあり、その方たちが支えてくれたおかげ、と述べた。

◇読者選出外国映画監督賞 フロリアン・フォン・ドナースマルク
出席者のお名前を失念してしまったが、配給会社のアルバトロス・フィルムの方。監督に伝えたら非常に喜んでいた。監督からのコメントを紹介しようと思ったが、非常に長いので、発売中のキネ旬に載っていますので、買って読んでいただければ、と笑わせてくれる。『善き人のためのソナタ』は地味な映画なのにヒットした。何より読者に支持されたことが嬉しく、配給できて本当によかった、と述べた。

◇キネマ旬報読者賞 川本三郎
テレビにもほとんど出ない評論家を選んでいただいてありがとうございます。だいたい雑誌に連載しても、やがてクレームがついて、半年くらいで連載中止になることが多いのだが、キネ旬はずっと連載をやらせてくださり、好きなことを書いて賞までもらえて、レベルの高い読者がいるということが嬉しくもあり、怖くもある、と述べた。

平日開催にもかかわらず、午前中の『ひめゆり』上映からかなりの観客数。私もたまたま時間がとれて参加できたが、ああやっぱり映画が本当に好きな人たちが集まっているのだなと思う。ただ、せっかくの表彰式なのだから、もうちょっとそれぞれのコメントの時間をたくさんとってくれればと毎年思う。でも楽しい1日だった。

(2008.2.5 有楽町朝日ホールにて)