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第50回(2007年度)ブルーリボン賞決定

ブルーリボン賞が1月22日に発表された。麻生久美子さんが、ここでも主演女優賞。おめでとう!三浦友和さんの受賞に『転々』がかかわっていることも嬉しい。私がとても気に入っている『アヒルと鴨のコインロッカー』がベストテンに選出されたことも、よかったなあと思える。作品賞が『キサラギ』というのは、思い切った選考結果だ。確かに『それでもボクはやってない』は強力だが、ビートたけしさんが言うように、むしろ監督賞に値する作品かも知れない。『それボク』のDVDでも、監督の映像がごっそり入っていて、これだけ監督を前面に押し出す方針も日本では珍しいのではないかと思ったほどだ。

◆作品賞 『キサラギ』

◆監督賞 周防正行(『それでもボクはやってない』)

◆主演男優賞 加瀬亮(『それでもボクはやってない』)

◆主演女優賞 麻生久美子(『夕凪の街 桜の国』)

◆助演男優賞 三浦友和(『松ケ根乱射事件』、『転々』、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』など6作品)

◆助演女優賞 永作博美(『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』)

◆新人賞 新垣結衣(『ワルボロ』、『恋するマドリ』、『恋空』)

◆外国映画賞『ドリームガールズ』

◆特別賞 故・植木等

◆邦画ベストテン
『アヒルと鴨のコインロッカー』
『キサラギ』
『しゃべれどもしゃべれども』
『それでもボクはやってない』
『天然コケッコー』
『包帯クラブ』
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』
『舞妓Haaaan!!!』
『めがね』
『夕凪の街 桜の国』

◆洋画ベストテン
『クィーン』
『グッド・シェパード』
『シッコ』
『ディパーテッド』
『ドリームガールズ』
『バベル』
『ブラッド・ダイヤモンド』
『ヘアスプレー』
『ボルベール/帰郷』
『ボーン・アルティメイタム』

『潜水服は蝶の夢を見る』試写会

友人の誘いで試写会に行くことができた。2007年のカンヌ映画祭で、監督賞と高等技術賞を受賞した作品だし、2008年のアカデミー賞にも、主要4部門でノミネートされているということから、当然期待はできた。ただ、「20万回の瞬きで自伝を綴った、驚異の実話。アカデミー賞最有力!涙きらめく、愛の感動作」というキャッチコピーに、やや薄ら寒い印象を感じていた私は、どうか泣かせようとする押し付けがましい作品でありませんようにと、祈る気持ちで会場に向かったのだった。そして、その懸念は杞憂に終わった。「20万回の瞬き」という感動要素を中心に据えるのではなく、いかにもフランスらしい、ちょっとブラックなウィットに飛んだモノローグと、カメラワークの見事さで、極めて新鮮な映像作りがなされている。観てよかった!

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『風の外側』

奥田瑛二監督作品は、『長い散歩』を観そびれてしまったので、これは観たいと思っていた。「夢」をテーマにした青春映画を作りたくて撮った作品だそうだが、聞くと歯が浮いてしまいそうな「夢」とか「青春」という言葉だけでは括ることのできない非常に内容の濃い作品だと感じた。何も事前情報を入れないで観に行ったので、奥田ファミリー総出であることに少々びっくりしたが、お手盛り感はいっさい感じさせず、客観的にみてもとても気持ちのよい映画だ。『風の外側』というタイトルも、実によい。作品のもつ魅力を端的に言い表しているように思える。

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第62回(2007年)毎日映画コンクール受賞者・受賞作品決定

毎日映画コンクールの結果が発表になった。嬉しいのは、女優主演賞の麻生久美子さん。2冠目、本当におめでとう!また涙で喜んでいらっしゃることだろう。男優主演賞は、国分太一さんだ。『しゃべれども しゃべれども』で、戸の閉め方がツボよね、と友だちと話したっけ。個人的には、加瀬亮さんより国分さんのほうが受賞にはふさわしいと思うので、日本映画の各賞に関しては、おおむね納得の結果だ。北村道子さんが『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』の衣装で受賞されたのも、さもありなんと思う。あの作品で何が一番印象に残ったかというと、やはり衣装だったから。

日本映画大賞   「それでもボクはやってない」
日本映画優秀賞  「天然コケッコー」
外国映画ベストワン賞 「長江哀歌」
男優主演賞    国分 太一「しゃべれども しゃべれども」 
女優主演賞    麻生 久美子「夕凪の街 桜の国」
男優助演賞    松重 豊「しゃべれども しゃべれども」
女優助演賞    高橋 恵子「ふみ子の海」
スポニチグランプリ新人賞   松田 翔太「ワルボロ」
                   成海 璃子「あしたの私のつくり方」「神童」
田中絹代賞   中村 玉緒
監 督 賞    周防 正行「それでもボクはやってない」
脚 本 賞    渡辺 あや「天然コケッコー」
撮 影 賞    中野 英世「殯の森」
美 術 賞    佐々木 尚「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」
音 楽 賞    レイ・ハラカミ「天然コケッコー」
録 音 賞    小松 将人「しゃべれども しゃべれども」
技 術 賞    北村 道子「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」(衣装)
アニメーション映画賞 「河童のクゥと夏休み」
大藤信郎賞   「カフカ 田舎医者」
ドキュメンタリー映画賞 「バックドロップ クルディスタン」
TSUTAYAファン賞
   日本映画部門  「恋空」
   外国映画部門  「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」
特 別 賞    故・熊井 啓(監督)
特 別 賞    故・犬塚 稔(脚本/監督)

『結婚しようよ』試写会

吉田拓郎さんに興味のない私にとって、「吉田拓郎の名曲で彩る、父と家族の物語。」という映画のキャッチコピーにはまったく惹かれなかったが、監督が『夕凪の街 桜の国』の佐々部清監督だということで、ちょっと観てみようかなと思い、試写会に応募したら当たったので、友人と行ってきた。

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『人のセックスを笑うな』舞台挨拶つき試写会

かなり楽しみにしていた作品なので、試写会に当選して喜んでいたところ、当日になって、どうやら松山ケンイチさんなどが舞台挨拶に来るらしいという情報をキャッチ。なるほど、試写会場にはかなり早く着いたのに、行列の長さは想像以上だ。寒い屋外で並んでいたためもあり、開場すると女性トイレに長蛇の列。開映までに列が解消されそうもないので、スタッフの方々が「これじゃ間に合わないよ!」と焦って、男性用トイレも女性に開放することに。

さて、お馴染みの映画パーソナリティー伊藤さとりさんのMCで、壇上にあらわれたのは、井口奈己監督、永作博美さん、そして松山ケンイチさん。永作さん、白と黒の大きな市松模様にところどころ花をあしらった和服!紫の帯がとても素敵!なんて可愛いのと、客席から感嘆の声があがる。こんなに素敵な永作さんを目の当たりにすることが出来たことだけで、試写会に行った甲斐があるというものだ。

井口監督は、「丁度クランクインしたのが、去年の今頃で、一般のお客様を前にするというのが、今日が初めてなので緊張する」と、感想を述べ、永作さん、松山さんの二人については、「反応するということが出来る俳優さんたちで、まさに"ゆり"と"みるめ"として映画の中で生きているので、世界中の誰に見せても恥ずかしくない作品ができた」と、自負の念を語る。

永作さんは演じた"ゆり"という役について、「自由奔放で素敵な女性なのだが、その奔放の幅がすごい。私自身が好きになれる素敵な女性にしたいと思って演じた。自分の新しい引き出しをあけて演じたと言える」などと語る。

松山さんは、永作さんについてたずねられて、「永作さんの笑顔がものすごく可愛い。その笑顔を一番近くで見ているので、永作さんの笑顔は僕のもの!という気がしている。恋愛物に出演するのは初めてなのだが、ドキュメンタリーを観ているようだと人に言われた。撮影が終わって1年くらい経つのに、永作さんはいまだに"ゆり"という感じで、着物姿は、やー、ホントすごく綺麗!」と誉めっぱなし。

好きなシーンはと聞かれると、永作さんは「みるめとゆりの出会い、何回か出会いがあるのだが、そのどれもが好き」と答え、松山さんは、「ゆりとみるめだけを描いているんじゃなくて、例えば、みるめと"えんちゃん"(蒼井優さん)の関係とか、全体的にすごく人間的な作品」だというところが魅力だと言う。

最後に井口監督が、「青春映画の金字塔を打ち建てるつもりで作った。頭で考えるのではなく、心で感じて帰ってくれる人がいたら、作った甲斐があった」と締めの挨拶をした。

そして、映画のロケをおこなった群馬県桐生市から、映画の成功を祈って大達磨が贈られたと披露され、永作さんと松山さんが右目を筆で描き込むというイベントがあった。永作さんが墨をつけすぎて、黒い涙のように達磨の目から垂れてきてしまい、それを途中で阻止しようと、松山さんが素手で墨の垂れを押さえたものだから、松山さんの手は真っ黒!写真撮影で、手を振ってくださいと言われて、その真っ黒になった手を振るので開場は大爆笑。マスコミがたくさん来ていたので、明日は様々なメディアで紹介されることになるだろう。

さて、映画本編の感想に移ろう。
以下ネタバレ

『迷子の警察音楽隊』

ほとんど情報に接することなく観に行ったために、どんな映画なのか、事前にまったく見当がつかなかったのだが、とてもキュートな作品だった。「可笑しかった」という評判の映画を観ても、ほとんど笑うことのない私が、思わず声に出して笑ってしまう場面が、そこここにある。もちろん、それはコメディーの可笑しさとは異質なもので、音楽を愛する真面目で平凡な人たちが、慎ましく行動しながらも、あるいは、慎ましく行動するからこそ醸し出してしまう温かみのある可笑しさなのだ。人間がとても魅力的に描かれていると思う。どこでも整列してしまう生真面目な警察音楽隊の面々と、自由で活発なイスラエル女性との対比がとてもよい。この「整列」という絵柄が、画面作りの上で非常に効果的だ。台詞もよく練られていて、音楽隊が音楽を演奏する場面は極めて少ないのに、何気ない一言一言で、彼らの音楽に対する愛情がよく理解できる。あとで、映画公式サイトをのぞいてみて、町の名前に深い意味があることがわかった。なーるほど!

俳優陣については、団長を演じるサッソン・ガーベイがやはり抜群によい味を見せている。滑稽の一歩手前で踏みとどまっている存在感が、さすがだと思う。何か今までに見たことのあるどの映画とも似ていない不思議な雰囲気の作品であるが、かなり気に入ってしまった。

(2008.1.11 シネ・リーブル池袋にて)

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第81回キネマ旬報ベスト・テン発表

注目のキネ旬ベスト・テンが発表になった。日本映画のベスト1は、予想通り『それでもボクはやってない』だ。周防正行監督は、監督賞、脚本賞も獲得している。素晴らしい!この作品は、おおかたの映画賞で揺るぎない評価を得るだろう。

日本映画のベスト・テンに選出された作品で、私が観ていないのは、第5位の『河童のクゥと夏休み』、第6位の『サイドカーに犬』、そして、第8位の『魂萌え!』の3作品。意外な気がしたのは、『しゃべれども しゃべれども』がかなり上位にランクされていることだ。

外国映画のほうは、観ているものが3作品しかないので、判断のしようがないが、私が全く共感できなかった『長江哀歌』がベスト・ワンか…

一番嬉しかったのは、文化映画で『ひめゆり』がベスト・ワンになったこと。この映画は、ドキュメンタリーという性格から、自分のベスト3に入れなかったものの、ある意味では2007年で最も感銘を受けた映画で、思い入れもあったので、ベスト1に輝いたことに感慨もひとしおだ。

主演女優賞は、麻生久美子さんに獲らせてあげたかったのだが残念!助演に関しては男優も女優も、もろ手を挙げて賛成できる。

■日本映画■
(1)『それでもボクはやってない』
(2)『天然コケッコー』
(3)『しゃべれども しゃべれども』
(4)『サッド ヴァケイション』
(5)『河童のクゥと夏休み』
(6)『サイドカーに犬』
(7)『松ヶ根乱射事件』
(8)『魂萌え!』
(9)『夕凪の街 桜の国』
(10)『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』
次点『愛の予感』

■外国映画■
(1)『長江哀歌』
(2)『善き人のためのソナタ』
(3)『今宵、フィッツジェラルド劇場で』
(4)『クィーン』
(5)『バベル』
(6)『やわらかい手』
(7)『ドリームガールズ』
(8)『ボルベール〈帰郷〉』
(9)『ゾディアック』
(10)『パンズ・ラビリンス』
次点『デス・プルーフinグラインドハウス』

■文化映画■
(1)『ひめゆり』
(2)『やーさん ひーさん しからーさん-集団疎開学童の証言-』
(3)『未来世紀ニシナリ』
(4)『いのち耕す人々』
(5)『終りよければすべてよし』
(5)『出草之歌 台湾原住民の吶喊 背山一戦』
(7)『有明海に生きて 100人に聞く、海と漁と歴史の証言』
(7)『カフカ 田舎医者』
(9)『花の夢-ある中国残留婦人-』
(10)『靖国』

■ そのほかの個人賞■
主演女優賞=竹内結子(「サイドカーに犬」「クローズド・ノート」「ミッドナイトイーグル」)
主演男優賞=加瀬亮(「それでもボクはやってない」「オリヲン座からの招待状」)
助演女優賞=永作博美(「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」)
助演男優賞=三浦友和(「転々」「松ヶ根乱射事件」「ALWAYS 続・三丁目の夕日」)
新人女優賞=蓮佛美沙子(「転校生 さよならあなた」「バッテリー」)
新人男優賞=林遣都(「バッテリー」)
外国映画監督賞=ジャ・ジャンクー(「長江哀歌」)

『シルク』試写会

新作としては、2008年の鑑賞第1本目ということになる。日本=カナダ=イタリア合作ということで、どんな雰囲気の作品になるのだろうと思ったのが、試写会に応募した理由だった。舞台は19世紀フランスと日本が主。いったい映画は何語で?と思っていたが、第1声を聞いてがっかり("SILK"というタイトルから想像はしていたが)、英語だ!

以下ネタバレ

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

2008年になって鑑賞した最初の1本。ついに公開時に観そびれてしまい、2007年度の各映画賞でかなり有力視されている作品であることもあって焦っていたのだが、ようやく観ることができた。文句なく面白かった。評判が高いのも十分頷ける中身の濃い作品である。何よりも、物語にオヤクソク的展開のひとつもないことが、観ていて片時も観客の興味をそがず、ストーリーにずんずん引き込んでゆく大きな要因となっている。いつもながら原作は読んでいないのだが、人気戯曲だと知って、なるほどと思う。そして、吉田大八監督が長編映画初のメガホンをとった作品だということが信じられない。CM界で培った才能が、そのまま大スクリーンでも薄められることなく披露されているという印象だ。

もちろん配役に恵まれたということも作品を成功に導いた大きな原動力だ。各所で高い評価を受けている主演の佐藤江梨子さん、妹役の佐津川愛美さんの熱演が光るし、個性的な演技でなくてはならない存在の永瀬正敏さん、永作博美さんが作品を引き締めている。ことに、永作さんの不気味さが抜群の印象を残す。

一言で言ってしまえば、家族の物語であるが、女同士のどろどろした関係は、『ゆれる』の男同士の物語よりも実感をともなって迫ってくる。これを2007年のうちに観ていたとしたら、きっと私の邦画ベスト3のひとつに挙げた作品になっただろう。

(2008.1.7 早稲田松竹にて)

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